Interview
『GOCCOPRO 100』でつくる新たなコミュニケーション
有田 昌史ありた・まさふみ 有田 昌史ありた・まさふみ

島根県生まれ。図案作家。女子美術大学芸術学部講師。名古屋芸術大学デザイン学部客員教授。グラフィック&ファブリックデザイナー。世界のフォークロアモチーフや、ファブリックにおける表現の可能性を探る。2004年から世田谷ものづくり学校を拠点に絵と布の創作活動を展開中。

「出雲」というキーワード

 小さい頃からごく自然に「描く」ということに親しんできました。具象・抽象を問わず、自分の内面から湧き出てくるものを表現していたのです。その根源的なものをたどっていくと、自分の生まれ育った「出雲」が大きなキーワードになっているなと強く感じます。出雲の自然や気候、小泉八雲に影響を与えた風土、物心がつく頃に見た五百羅漢の記憶など、民俗への共鳴が、私の創作活動の源にあるのは間違いありません。
 私が創作テーマとして掲げているフォークロアは、民俗と訳されることが多いようですが、意図して民俗を追求していたわけではありません。根源的なもの、自らの内面にあるものを探っていった結果として生まれたデザインが、よくよく見ると民俗的であったということなのです。

GOCCOPROの面白さ

GOCCOPROの面白さ

 『GOCCOPRO 100』(ゴッコプロ100)は、まず外観に興味をひかれました。 最近の家電製品やオフィス機器には滑らかな曲線のフォルムのものが多く、色調も白やグレーなどが主流です。それに比べ、赤くて四角いスタイルは全く異質で気になる存在でした。
 使ってみるとこれが面白い。本格的にスクリーンプリントに取り組もうとすると、大きな設備が必要で、制作工程の手間も多いのですが、『GOCCOPRO 100』だと簡単です。たとえば、海外の友人がスマートフォンで撮った画像を送ってくると、すぐに版ができて30分後にはその画像を印刷したTシャツができ上がります。それを着て撮影した画像を友人に送ってあげる。こんな素敵なコミュニケーションが『GOCCOPRO 100』を使うと簡単にできてしまう。私が講師をしているテキスタイルの講座でも、参加者たちが面白がって自分たちのデザインをどんどん刷っています。
 『理想の詩』の表紙デザインの制作には、『GOCCOPRO 100』を使っています。デザインモチーフは「象形文字」 が生まれる前の状態、いわば「プレ象形文字」です。文字には人々が連綿とつむいできた営み、広い意味でのフォークロアが投影されていると思うのです。コミュニケーションという本誌のテーマにも合っていると考えています。豊かな色彩と個性的なモチーフが印象的な有田さんのファブリック作品。

世田谷ものづくり学校での表紙制作風景。

世田谷ものづくり学校での表紙制作風景。
表紙の言葉
「アウトプット・インプット」

想いや言葉……。人と人が生きていく中で、互いに何かを与え、与えられる関係をイメージしました。
理想の詩