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世界に類のないものがたり
Vol.1 エマルジョンインク

 いまや食卓に欠かせないドレッシング。お宅にもきっとありますね。使うときにはよく振って、均一に混ぜて使う。でもしばらく置いておくと上下に分離してしまう。実は、この現象の研究が、日本の印刷に大きな革新をもたらした「エマルジョンインク」誕生の裏に秘められていました。

海外から輸入していたエマルジョンインク

 まだコピー機もプリンターもなかった1950年代、学校やオフィスなどで印刷に用いられていたのは謄写版、いわゆるガリ版です。大きなローラーにインクをつけてスクリーンの上を転がすと、原紙に刻まれた文字や絵が下に置いた紙に転写される仕組み。ここで使われていたのが、「エマルジョンインク」でした。
 謄写版による印刷を生業としていた、理想科学の前身、理想印刷社にとって、「エマルジョンインク」は必需品。しかし当時の日本にはまだ製造のノウハウがなく、すべてが輸入品だったため、とても貴重で入手するのが大変でした。

日本にないなら、つくってしまおう

 そんなある日、取引先から「3時までならインクを分けてあげます」と言われた創業者羽山昇(当時社長)は、急いでスクーターに乗り、受け取りに向かいました。ところがその途中、物陰から飛び出した老人を避けようとして電柱に激突、重傷を負い入院するはめに。そのときベッドの上で考えたのは……もはや輸入に頼ってはいられない。自分の手でつくってしまおう。

水と油に、新しい関係を

 インクの原料である「水」と「油」を、よく振ったドレッシングのように安定的で均一な液状に保つ。そして刷った瞬間二つを分離、油分と顔料(色素)だけを紙に残し、水分は蒸発させる。カギを握ったのは界面活性剤でした。一年半かけてたどりついた、その配合の処方書は、社長しか開けることのできない金庫で極秘管理されたそうです。
 1954年、いまからちょうど60年前に、ようやく開発に成功した日本初のエマルジョンインク「RISOインク」。それは、謄写版印刷業から印刷機材メーカーへと変身し、世界に類のないものを創る@搗z科学の出発点ともなったのです。

SIDE STORY|開発本部 奥田 貞直

日本初のエマルジョンインク「RISOインク」完成

 試行錯誤の結果、開発された「RISOインク」。当時、「不思議ときれいに刷れます」というキャッチフレーズで紹介され、評判を呼びました。数年後には、国内だけでなく海外からの引き合いも多くなり、輸出も次第に増えていきました。

1954年に開発された「RISOインク」

水と油の絶妙なバランスで安定性の高いインクに

 理想科学のエマルジョンインクは、油の中に水分と顔料が分散しており、印刷の際、余分な水分は蒸発し、顔料と油分だけが紙の表面に定着します。こだわったのは定着のための油分量と、保存しやすく印刷時の速乾性も追求した水分量の最適なバランス。寒冷地でも温暖地でも温度による影響を受けにくい、安定性に優れたインクです。

顔料の粒は直径約0.1ミクロン、水分の粒は直径約1ミクロン。

希望通りの色にできるオーダーカラーインク

 お客様の注文に応じてインクを調合、コーポレートカラーなどオリジナルの色のインクをつくることができるのがオーダーカラーインクです。使用される紙との相性も考慮しながら、希望通りの色に調色します。

1954年に開発された「RISOインク」

かつては色ごとに異なった顔料や水の配合処方を統一することで、生産体制を効率化。さらにさまざまな色インクを調合する際の品質安定化にもつながります。長年培ったノウハウを生かし、お客様の色に対するニーズに迅速に対応します。

理想科学の強みは 印刷機にマッチした消耗品の開発

 高精細化、高速化、両面対応化など、いまも進化を続けているデジタル印刷機「リソグラフ」。印刷機に合わせて、消耗品であるインクやマスターも改良を重ねています。お客様に質の高い印刷物を提供するためには、乾きが速く両面印刷に適したインクの開発、印刷機の解像度を生かし高精細に再現できるマスターの開発は不可欠です。印刷機も消耗品もすべて自社で開発・製造することが理想科学の強み。部門間のスムーズな連携がスピーディーでクオリティーの高いものづくりを可能にしています。

開発本部 P&Dセンター SU開発部 角田 肇

新製品「リソグラフMEシリーズ」の消耗品。 インク(左の5本)とマスター。

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