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世界に類のないものがたり
Vol.4 プリントゴッコの開発

 イモ版か干支のハンコをペタンと押す。家庭でつくる年賀状といえばそれがふつうだった時代、常識を一気にひっくり返す画期的な印刷機が生まれました。理想科学のプリントゴッコ。いまのように家庭にパソコンとプリンターが普及していなかった1970年代に、印刷を家庭で行う新しい文化のさきがけとなったのです。

「ゴッコ」に込めた思い

 ガリ版印刷業から始まり、エマルジョンインクや感熱孔版システムの開発など、孔版技術を独自に磨いてきた理想科学。製版と印刷の工程を同じ機構に納める画期的なアイデアで、印刷機をノート程の大きさに圧縮し、誕生したのがプリントゴッコでした。それは、自由なデザインのカラフルな年賀状が、誰でも簡単に印刷できるというもの。名前の由来でもある「ゴッコ」遊びは、親から子へ日本の文化や風習を伝える「知育」でもあります。創業者羽山昇(当時社長)は、「親子で〝印刷ゴッコ〟を楽しんでほしい」、そんな思いを込めて名づけました。その願いの通り、瞬く間に日本中に広がり、プリントゴッコで年賀状をつくることは当時「国民行事」といわれるまでになりました。

人気爆発にてんやわんや

 発売と同時にプリントゴッコは売れに売れ、全国各地の百貨店、文具店で品切れが続出。とうとう全国紙に「お詫び広告」を掲載することも。増産を続けながら、週末になると、全国各地のデパートでデモンストレーションを実施。社員全員が店頭に立ち、お客様の前で実際に印刷すると、プリントゴッコは次々と売れていきました。

孔版印刷技術の未来へ

 プリントゴッコによって理想科学は大きく成長、事業規模も大きく広がりました。また開発にあたって積み重ねた知識と経験は、孔版技術においても新しい可能性を切り拓いています。大量印刷でオフィス印刷機の常識を変えた「リソグラフ」シリーズも、プリントゴッコと同じ孔版印刷技術の応用から生まれました。きらめくアイデアとたゆまぬ研究開発、そして全社一丸となって躍動するチームワーク。プリントゴッコ事業が終了したいまも、それらは最新の製品に脈々と受け継がれているのです。

SIDE STORY|開発本部 奥田 貞直

社会に役立つものをつくりたい

 「孔版はこれからの技術」ととなえ続けた羽山昇。プリントゴッコ開発の根底にあったのは、その仕組みを応用し、「世界にない技術を開発し、社会的に有益なものをより多く送り出すこと」への情熱だった。

1977年に発売された「プリントゴッコB6」。

全社一丸の生産体制

 発売当初、現場では資材をかき集めてなんとか「月1万台生産」に臨んだものの、すぐに増産指示が。製造はもちろん、開発、営業も協力し全社が一丸となり、3カ月で6万台を生産することができた。

ハイピッチで生産される製品の検査と箱詰め作業。

エジソン博物館も驚いた

 孔版印刷の一種で、ガリ版(謄写版)印刷機といえば、その原型はエジソンの発明とされる。アメリカ・ニュージャージー州のエジソン博物館でプリントゴッコのデモンストレーションを実施したところ、ランプが発光して製版、色鮮やかに印刷される様子に、主席管理官バーン・C・ベッツ氏は目を丸くしていたという。

いまもリソグラフに受け継がれる孔版印刷の原理
いかに高品質の画を印刷できるかに注力

 「孔版印刷」の原理を利用したプリントゴッコ。その仕組みはデジタル印刷機リソグラフにも受け継がれています。リソグラフでは、マスターと呼ばれる版にサーマルヘッド(※イラスト参照)で微細な孔を開けて製版し、その版をドラムに巻き付け、インクを出して自動印刷します。
 画像をつくるうえで重要なのが、印字装置・サーマルヘッド。基板上には小さな発熱体が整列配置されていて、スキャンされた原稿のデータ内容に応じて発熱体に通電、マスターに孔を開けます。暑い場所ではやわらかく、寒い場所では硬くなる特性を持つインクなど、変化する消耗品の情報に応じて、サーマルヘッドが孔の開け方をミクロ単位で電気的に自動制御しています。電気系や機械系と一丸となった日々の研究、開発の結果、さまざまな条件、環境下での同一品質の印刷を可能にすることができました。

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