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「理想の詩」理想的時間旅行(2016年秋号)

Vol.2インク

オルフィスで使われている油性顔料インク。顔料や染料は、いわばインクや絵の具などの「色のもと」。水や油に溶けないのが顔料、溶けるのが染料と分けられます。暮らしや文化に欠かせないインク、そして顔料と染料の歩みをたどります。

アルタミラ洞窟の壁画

HISTORY 1 ─最古の使用例は洞窟の壁画!─

水や油に溶けない顔料の原料には、古くは鉱物を砕いて粉状にしたものが用いられていた。顔料の特性は「耐候性」が高く、日光や風雨、温度変化などで変質や劣化を起こしにくいこと。紀元前18000年から15000年とされているスペインのアルタミラ洞窟やフランスのラスコー洞窟の壁画をいまも目にできるのは、その特性のおかげだ。洞窟には赤いベンガラや木炭といった顔料で、牛などの動物が生き生きと描かれている。

赤い顔料で装飾された
弥生時代の壺(イメージ)

COLUMN ①

古代の日本人が好きな色は?

日本に顔料が登場したのは縄文時代。紀元前7000年から3000年といわれている。ベンガラなどの赤い顔料がよく使われたようで、赤い漆を塗った櫛や、赤く染めた糸などが出土している。弥生時代になると、壺など土器の装飾にも顔料を使うようになり、古墳時代には、赤や黒の顔料で墓を装飾することも行われた。

染料:カイガラムシ〈赤〉、刈安〈黄〉、
蘇芳〈赤紫〉

HISTORY 2 ─布や糸を好みの色合いに─

水や油に溶ける染料は、色を定着させるのが難しく、人類が使い始めたのは顔料よりぐっと新しく、紀元前4000年ごろといわれている。布や糸を染めるために用いられることが多かった。写真のイネ科の多年草刈安(かりやす)は黄色、東南アジア原産の蘇芳(すおう)は赤紫、カイガラムシに含まれるコチニールは鮮やかな赤に染めることができる。

COLUMN ②

浮世絵を後世に伝えた染料

江戸時代の木版刷りの浮世絵に、顔料を使った絵の具を多用することはできなかった。大量印刷の木版刷りの浮世絵を庶民が買える価格にするには、高価な顔料はコストの面で難しかったからだ。そこで顔料に加えて、染料を使った絵の具も多く用いた。広重や歌麿、北斎がいまも知られているのは、染料のおかげといえるかもしれない。

COLUMN ③

ダ・ヴィンチも愛した「青」

ウルトラマリンは「海を越えてきたもの」という意味の顔料で、宝石としても知られるラピスラズリが原料だ。その名は、ラピスラズリの主産地が現在のアフガニスタンのバダフシャン地方で、そこから「海を越えて」、ヨーロッパなどにもたらされたことに由来する。鮮やかな「青」のウルトラマリンは、レオナルド・ダ・ヴィンチにも愛され、有名な「最後の晩餐」にも使われている。

〈話をうかがった方〉

國本 学史(くにもと・のりふみ)
慶應義塾大学文学部非常勤講師。色彩文化史、色彩語彙、彩色材料などについて研究している。

オルフィスを支える油性顔料インク

2003年に登場したオルフィスのために独自開発した油性顔料インク。顔料、油分、分散剤、添加剤などの原材料を厳選するとともに、それらのバランスにも工夫し、高速で安定した印刷、読みやすい印刷濃度、低コストなど、オルフィスの特長を支えている。

最新機種オルフィスGDと専用に開発されたインク。

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