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「理想の詩」Close Up(2019年夏号)

「大地の芸術祭の里」で体験するアートブックの面白さと広がり

世界的にも著名な「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」。その運営にあたっている NPO法人の越後妻有里山協働機構が、地域の魅力を掘り起こす冬のアートイベントを開催した。 その模様から、アートと地域とのかかわりや、「リソグラフ」の働きを紹介する。

会場には、さまざまなアートブックやアーティストが松代で制作した本が展示された。

地域の魅力・可能性を発信!

2000年から3年に1度行われている世界最大級の芸術展、「大地の芸術祭 越後妻有アート トリエンナーレ」。その舞台が、新潟県十日町市と津南町にまたがる越後妻有地域で、「大地の芸術祭の里」と名づけられている。この「芸術祭の里」で行われた冬のイベントのひとつが、総合文化施設の「まつだい『農舞台』」で、2019年1月19日から3月24日まで開催された「アート/ブックのとても大きな部屋:読む・作る・考える」だ。
 企画を担当したエディション・ノルトの秋山伸氏は、「アートブックは、芸術に関する本の総称ですが、今回の展示では、アーティストが自らつくった本、アーティスツ・ブックが多く含まれています。アーティストがさまざまな工夫をしてつくった本は、読むという受動的な接し方だけでなく、つくるという能動的な接し方もできることを教えてくれます」と、イベントのタイトルに「読む・作る・考える」を入れた理由を説明する。
 会場には、日本各地の個性的な出版社などから集められたアートブックや、アーティストが松代に滞在してつくった本が展示されたほか、本をつくる面白さを経験するワークショップも実施された。その中には、「リソグラフ」を使ったアートブックづくりもあった。
 秋山氏は、アートブックづくりにおいて、「リソグラフ」の働きは大きいと言う。「『リソグラフ』の魅力は、手軽で安価であることと独特な風合いを持つ発色のよいインクですね。近年世界各地で、『リソグラフ』を用いてアーティスト・ブックをつくる動きが活性化しています。『リソグラフ』というシンプルで奥深い技術が、アーティストのインスピレーションの源泉にもなろうとしているんです。」
 全国各地から訪れるアートブックのファンと本やアートを愛する地元の人たちが、アーティストの本づくりの現場を目撃したり、「リソグラフ」で自ら本づくりを経験できる「生きたライブラリー」としての展覧会。こうした活動が、地域をより深く経験し、より深く考える契機になるはず、と秋山氏は考えている。

「リソグラフ」によるアートブックづくりのワークショップでは、参加者が小冊子の印刷に挑戦。東京にある「リソグラフ」をベースとした印刷スタジオ、Hand Saw Pressの菅野信介氏と安藤僚子氏が、「リソグラフ」での印刷のポイントをわかりやすく説明していた。

「リソグラフ」で印刷したアートブック。「リソグラフ」での印刷について菅野氏は、想定を超えた仕上がりになることがあり、それが面白さを生み、魅力になっていると話している。

 えがしらはなこ氏のマンガを「ゴッコプロ」で製版し、シルクスクリーンを体験するワークショップも実施。刺しゅうの枠をフレームに転用するアイデアが面白い。

 地元の松代小学校では、Hand Saw Pressによる学校の「リソグラフ」を使ったワークショップも行われた。子どもたちは、自分の似顔絵とキャッチコピーが重ね刷りされたチラシをつくり、クラス内で交換し合った。

edition nord

「大地の芸術祭の里」に隣接する南魚沼市にあるデザイン事務所。東京藝術大学で教鞭も執る秋山伸氏と堤あやこ氏を中心に出版活動も行っている。世界各地のアートブックの展覧会やフェア、シンポジウム、教育機関から参加依頼を受けるなど、日本の豪雪地方で活動しながら世界的な発信を続けている。

  • 次回2019秋号は9月上旬のお届けを予定しております。

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