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「理想の詩」理想的時間旅行(2016年夏号)

Vol.1ガリ版

理想科学のリソグラフに使われているのは「孔版印刷」技術。
同じ原理を持つのが、ほんの数十年前まで学校で手にする通信類やテストの答案印刷などに大活躍していた「ガリ版」です。その誕生と発展にフォーカスします。

ABOUT ─「ガリガリ」書くからガリ版に─

 ガリ版(謄写版)とは、明治時代に生まれ小・中規模印刷に大活躍した簡易印刷機のこと。鉄製のヤスリ板を下敷きにロウ原紙を載せ、その表面に鉄筆で文字を書き、鉄筆により開いた微細な孔からインクが押し出され文字が印刷される。リソグラフと同じ孔版印刷の原理を持つ(左図参照)。文字を書く際の「ガリガリ」という音からその名が付いたとされる。

国立国会図書館蔵

COLUMN ①

非常時に活躍したガリ版

製版から印刷まで誰でも簡単に一人でできること、持ち運びが楽で電気も不要、原紙を破棄すれば機密漏えいを防げたことなどから、日清戦争、日露戦争における軍用通信にガリ版が活躍。また、都市が壊滅状態にあった関東大震災直後にも、政府の刊行物「官報」(写真)や新聞がガリ版で刷られた。

エジソンの輪転式
ミメオグラフ。

HISTORY ─エジソンの発明のひとつ─

 欧米では19世紀後半から事務作業合理化へのニーズが高まり、簡易印刷機の開発が進んでいた。そんな中アメリカの発明王トーマス・エジソンの手により簡易印刷機「ミメオグラフ」が発明される。1894(明治27)年には、ミメオグラフを原型とし、よりシャープな鉄筆、薄くて丈夫なロウ原紙など、細かい文字表記の多い日本語に適した形に改良された謄写版印刷機が日本で初めて発売され、行政機関や学校などに普及していった。

COLUMN ②

宮澤賢治も!? 「筆耕」の担い手

ガリ版印刷において鉄筆で文字を切る(書く)専門業務を当時筆耕と呼んでいた。詩人の宮澤賢治も、一時期、東京帝大赤門近所の印刷所で筆耕の仕事にあたっていた。理想科学の創業者羽山昇も、その原点となったガリ版印刷業の開業当初、筆耕と印刷の両方を自ら担当していた。

ガリ版伝承館

 1909(明治42)年に現在の滋賀県東近江市に建てられた堀井新治郎親子の家を改築し、1998(平成10)年に開館。ガリ版体験コーナーのほか、堀井親子が携わったガリ版黎明期の機械、ガリ版が使用された印刷物などガリ版の歴史を語る貴重な資料が多数展示されている。

話をうかがった蒲生コミュニティ
センターの田中浩さん。

版ごとに色を重ねる多色刷りもでき、細かな表現も可能
だったため、商業利用や芸術表現もさかんになった。

COLUMN ③

識字率UPに貢献!?

答案印刷や通信類など教育現場でガリ版が広く活用されたことが、教育効果を上げ、ひいては識字率の飛躍的な向上に寄与したとも。

かんたん操作で大量印刷を可能に

孔版印刷の仕組みを応用し1980年に生まれたのがリソグラフ。
版(マスター)が巻きついた円筒形のドラムが内蔵されており、コピー機のような使い勝手で同じ原稿をかんたんに大量印刷することができる。

最新機種のSFシリーズでは生産性・利便性・画像性の基本性能が大幅アップ。孔版インクで世界初、国産米ぬか油を使用したライスインクを開発。

参考文献:『ガリ版ものがたり』(大修館書店)志村章子著、 『ガリ版文化史 手づくりメディアの物語』(新宿書房)田村紀雄/志村章子編著

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