1980年、複写機のような使い勝手の印刷機が登場したと、新聞で大きく報じられた新製品がありました。理想科学の「リソグラフFX7200・AP7200」。複写機、いまでいうコピー機が全国のオフィスに普及し始めた時代、「大量印刷」のメリットを掲げ、真っ向から挑んだ画期的な全自動の孔版印刷機でした。
印刷機がなければつくる
エマルジョンインクを開発した理想科学は、当時、そのインクのよさを引き出すべく独自の製版機を世に送り出していました。わずか数秒で印刷のもととなる版を作成できる製版機と、その版に最適なインク。みんなに喜んで使ってほしいと願っていましたが、孔版印刷機は海外メーカー製が多く、昔からある油性インクの使用を前提としたものがほとんど。そうした印刷機すべてとマッチするような消耗品づくりは難しく、営業担当者は悔しい思いをしていました。それなら印刷機も自分たちでつくるしかない。創業者羽山昇(当時社長)は一大決心、印刷機の自社開発に着手したのです。
試行錯誤の「100万枚テスト」
しかし印刷機づくりは初めての経験、一筋縄ではいきません。そこで試作機に課したのが「100万枚テスト」。当時、オフィス用印刷機の耐久性の限界といわれた100万枚の印刷を敢行しました。特命プロジェクトだから見守るのは営業と開発担当者のわずか2名。お客様視点で、日夜目を皿のようにして試作機を徹底的にチェックし、それに開発スタッフが必死に応えていく。気の遠くなるような試行錯誤の連続でした。
印刷機総合メーカーへの飛躍
印刷機といえば、手動でインク調整を行うため手が汚れて当たり前だった時代、インク供給を自動化させた「リソグラフAP7200」は、理想科学の社員たちさえをもあっと驚かせました。そして翌年、全国に販売が広がるなか、再び「100万枚テスト」を実施。営業現場の社員が身をもって「製品を熟知する」ためのテストは、気がつけば180万枚に達しました。この予想を超える耐久性は、営業から開発にいたる社員のチームワーク強化や販売への自信、開発への信頼につながったのです。
印刷機という新しい技術への挑戦は、ハードとサプライのベストマッチとともに、理想科学を印刷機総合メーカーへと大きく飛躍させました。そしてそれは同時に、全社一丸で取り組む、理想科学のものづくりの精神が誕生する契機でもあったのです。
世間を驚かせた画期的な印刷機の誕生
製版機と印刷機とのマッチングをよくし、汚れの心配もなく、使い勝手のよい製品を―。これら3つのキーワードを目標に開発された「リソグラフFX7200」と「リソグラフAP7200」は画期的な製品として話題となり、東京・浜松町で行われた発表会には2日間で延べ5000人が訪れた。
100万枚テストを支えた興奮と情熱
「100万枚テスト」の担当者たちは、二人一組となり、ふだんの業務と並行して交代制でテストを実施。1日あたりのテスト印刷枚数が15万枚を超える日もあった。世界に類のない印刷機を世に出すのだという興奮と情熱で、ときを忘れて日夜テストに臨んだという。
挑戦心とチームワークで実現した
業界最速の用紙搬送スピード
理想科学の製品の大きな魅力のひとつが、その印刷スピード。これまで一貫して、より速い印刷速度への挑戦を続けてきました。「紙は生き物」といわれるように、印刷機の設置環境の温湿度や搬送過程での力のかけ方などによって、紙の状態は敏感に変化します。開発部門は、さまざまな環境・用紙種類でも、高速でスムーズな用紙搬送を実現すべく、他部門の担当者とも協力しながら開発にあたり、リソグラフSEシリーズにおいて毎分185枚※という業界最速の用紙搬送スピードを更新しました。
開発部門が培ってきたすぐれた用紙搬送技術は、オルフィスの大容量給排紙ユニットや、海外向けのRISO A2という、タブロイド版2ページサイズに相当する大判印刷が可能な機種の用紙搬送にも生かされています。国内外のさまざまなお客様に向けて最適な印刷ソリューションを提供できるよう、開発は今後も挑戦を続けます。
※ハイスピードモード、ストレート給紙時のみ。2014年3月現在販売のオフィス用デジタル孔版印刷機において業界最速(当社調べ)。
別の号の「世界に類のないものがたり」