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「理想の詩」創り出す人々(2018年冬号)

紙から生まれる無限の造形美

色鮮やかな和紙で折った平織りの作品。「目指す世界観があるわけではなく、純粋に美しい形を求めて折るだけ」という布施さん。幾何学模様に惹かれるのは数学を専攻する“リケ女”でもあったからかと尋ねると、「そうかもしれませんね」と笑顔が返ってきた。

薬包紙を使った折り紙に夢中になった幼少期

規則的に、幾重にも折り重ねられた紙から立ち現れる、精緻で美しい幾何学模様。誰もが幼い頃慣れ親しんだあの折り紙に、これほどまでの造形が可能なのかと驚かされる。そんな折り紙の多彩な表現の可能性を長年追求し続けているのが布施知子さん。一枚の紙からつくるいわゆる“純粋折り紙”に関する数多くの書籍を手がける一方で、複数の紙を組み合わせて折る“ユニット折り紙”の第一人者としても国内外で知られる存在だ。昔から日本では、くす玉や毬など複数の紙を使う折り紙は民間伝承されていたが、表現の一ジャンルとして洗練させ、進化させてきたのが布施さんだった。 「いまは世界中にユニット折り紙の折り手がいる。私の活動が彼らの創作の道を拓くきっかけになったことは嬉しいですね」と布施さんは話す。  布施さんが初めて折り紙に出会ったのは、病気で長期入院を余儀なくされた小学2年生のとき。「病院で、薬が包まれていた正方形の薬包紙を使って患者さんたちがよく折り紙を折っていたんです。折り方を教わるうち、私も夢中になっていました」。その後も「パズルのように完成形に近づけていく過程や完成時の達成感」に惹かれて折り紙を続けた布施さん。やがて折り紙作家になりたいという夢を抱くようになり、大学卒業後は学習塾講師のアルバイトをしながら一般的な折り紙の本の執筆に取り組むように。そんな中ある資料で、多面体を折るユニット折り紙の記述に出会う。「すぐに私もやってみたいと思って編集者に相談し、ユニット折り紙の本も出すことになったんです」

世界中で、紙ほど身近な素材はほかにない

一般的な折り紙の本の場合、作品は、手順に従えば“誰もが折れる”ことが求められる。「でもこの頃やっている折り紙は“誰もが折れなくてもいい”んです(笑)。手間はかかりますが、思いのままに創作する喜びを味わえる」と布施さん。ユニット折り紙では、完成形へ向かってロジカルに手順を組み立てていく一方、近頃手がけるのは、折りながら「これだ」と思える形を探っていく折り紙。「できた!ではなく、探していた形が見つかった!という感覚。面白いですね」
 初期の作品集はすぐに海外の愛好家の目に留まり、その後ヨーロッパで出版が相次いだ。そしていまや布施さんの名は、日本人オリガミアーティストの代名詞に。「世界中で紙ほど身近な素材はありません。特別な道具もいらず、初心者もベテランも同じ喜びを味わえる。だからこそ多くの人を魅了するんでしょう」
 これからも面白いと思える形を模索し続けたいという布施さん。どんな作品を生み出していくのか、注目したい。




どんな紙を選ぶかも、作品づくりの重要な工程。「この紙だったらどんな形に合うかな、などとイメージしながら紙を見極めます。いい紙は、折っていてもぴったりと形が決まって気持ちがいい」

 日々、紙を触りながら試作をし、理想的な形を模索する。「いつも山のように試作品をつくります。それぞれが作品の大事な設計図になります」

2017年、北アルプス国際芸術祭で展示された「無限折りによる枯山水 鷹狩」。アトリエで制作した作品を実際に現場に設置、ライティングなどを施すことで、また作品の新しい表情が見られることも楽しみなのだという。

取材時、布施さんがちょうど準備中だったイタリアで出版されるという作品集の一作品。中にライトを設置できるようになっている。

布施 知子(ふせ・ともこ)
新潟県生まれ。学習塾講師のアルバイトを10年勤めた後、折り紙の書籍執筆、講習に専念。1980年にユニット折り紙に出会って以降は、本の執筆と作品集の発表、国内外での個展開催など創作活動を展開させている。著書に『おりがみで作るオーナメント: 1年中インテリアとして楽しめるくす玉、ユニットおりがみ』(誠文堂新光社)、『箱のおりがみ』(日本ヴォーグ社)ほか外国語版の書籍も多数出版。

  • 次回2019春号は3月上旬のお届けを予定しております。

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