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「理想の詩」創り出す人々(2019年秋号)

平面×立体の不思議を楽しむ

何層ものレイヤーを重ねることで奥行きを表現。「モチーフをあえて前後に重ねることもあります。そうすると、手に取った人が『後ろに何が隠れているんだろう?』と、覗き込みたくなりますから」

誰にでも喜ばれるような作品を目指して

 掌に乗せた平面の白い紙に、横からやさしく力を入れると、なんとも繊細な立体造形が一瞬で立ち現れる。「一見複雑に見えるかもしれませんが、つくりは至ってシンプルなんですよ」。そう笑顔で話すのは、作者の月本さん。見た目の美しさもさることながら、その仕掛けの面白さで話題を呼んでいる作品だ。もともと保育士を目指しており、子どもに喜ばれるメッセージカードをつくりたいと考え、飛び出す絵本の仕組みを応用したカードを思いついた月本さん。その、いわば“仕掛け”部分だけを作品として昇華させていったのが球体ポップアップカードだ。  「球体ポップアップカードの構造を大きくふたつに分けると、外側の球体と、内側のモチーフからなります。外側の球体は複数のリングからなる無機質な設計ですが、内側のモチーフはなじみのある童話など、誰にでも喜ばれるようなデザインを心がけています」と話す。  球体部分の設計には、月本さん独自の手法を用いている。もともと数学が得意で、立体の展開図などもすぐに理解できるような子どもだったという月本さんは、まず「この設計を数式に落とすことはできないだろうか」と考えた。「パソコンに数値を入れて試行錯誤してみたところ、計算式を見つけることができました。ですから球体の設計は図面を書くのではなく、まず数式から考えます」。球体の大きさ、厚み、パーツ間の間隔の数値を入力すれば、設計図ができ上がるようになっているという。

実際に手で触れて、楽しんでほしい

 ワンタッチで平面にも球体にもなる仕組みのため、紙の硬さや耐久性にもこだわり、ケント紙を主に使用。立体にしたときに紙の切れ目が内部で噛み合い、球体がちょうどいい強度で維持されるようになっている。紙の色も、さまざま試した結果、誰にでも受け入れられるだけでなく、もっともデザインが映え、奥行きを感じさせる「白」に行きついた。「いま主に活用しているギミックは、球体のほかに“歯車”がありますが、今後はもっと大きなサイズの球体や、箱の中に球体が入るデザイン、あるいは歯車で人形が動くような仕掛けなどにも挑戦してみたい」という月本さん。
 球体ポップアップカードの最大の魅力は、触ってみて初めてわかる。「展示会などで子どもが触ろうとすると、親御さんが止めに入るんです。気持ちはわかりますが(苦笑)、僕の作品を見かけたら、大人も子どもも、ぜひ、その手で触れて楽しんでもらいたいですね」

「仕掛けを思いついた時にはワクワクします。具体的な形にするのは面倒ですが(笑)、早く見せたい、人が驚く表情を見たいと思っちゃいますね」と月本さん。

直感的に球体にでき、直感的につぶせるような設計と、外側はなるべくシンプルで、中は華やかなデザインにこだわっている。

中には、両手を使わないと持てないくらいの大きな作品も。「今後はもっと大きく、もっと緻密な作品もつくってみたいですね」と月本さん。

月本さんは「僕の作品は主役ではなく、あくまでもプレゼントに添えるカードとして手に取ってもらえれば」と話す。

月本 せいじ(つきもと・せいじ)
兵庫県出身。展示会やイベントなどでポップアップカード作品を発表している。著書に『SPHERE不思議な球体ポップアップカード』『GEAR WORLD 歯車で動くポップアップカード』(いずれもグラフィック社)がある。月本さんの作品は以下のサイトでも購入可能。
https://arundel.shop-pro.jp/

  • 次回2019冬号は12月上旬のお届けを予定しております。

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