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「理想の詩」創り出す人々(2020年冬号)

粘土で生み出す"かわいい"世界

©N35(小山薫堂)

オリジナル作品も手掛ける一方、さまざまなクライアントとの協業も多い。そのため自身を作家ではなく職人と認識。「職人として、技術を磨き続けたい」と話す。

立体造形を始めた理由は仕事の効率化!?

丸みのあるフォルムに、明るくポップな色合いが印象的な動物やキャラクターたち。見ると思わず「かわいい!」と声に出してしまいそうな立体イラストレーションの数々を手掛けるのが、森井ユカさん。書籍の表紙から企業ブランドの公式キャラクター、対戦型カードゲームのキャラクター造形まで、幅広いジャンルで活躍する立体造形作家だ。「支持していただいている理由は、やはり作品のかわいらしさにあるのではないかなと思います。ようやくそう恥じらいなく言えるようになりました(笑)」

当初は、元来自身の好みでもある、エッジの効いた不気味な雰囲気の作品もつくっていたという森井さん。「でも評価されるのは決まってかわいい作品なんです。そこで大学院に入り直し、自分なりに、日本人にとっての“かわいい”を研究。そういう作品づくりを極めようと思いました」

立体造形を始めたきっかけも意外だ。「イラストレーターとしてキャリアをスタートさせたものの、描くのに時間がかかるのがネックだったんです。そこでふと粘土を使ってみたら、さほど時間を掛けずに完成させられた。効率化のために始めた立体造形ですが、いまでも飽きずに続けられているので、結局向いていたんでしょうね」

既存の色を混ぜて自身が求める色を創り出し、造形、オーブンで焼いて発色を確認する。
使用するのは主にアクセサリーなどに利用されるドイツ製の樹脂粘土。発色がよく、撮影が前提の造形に適しているそう。
「こぶとりじいさん」講談社『おともだち』2020年6月号
作家としての自分らしさをいかに作品に反映させるか。いまも試行錯誤を続けているという。©TKUテレビ熊本

海外の日用品デザインに刺激を受け、自身の創作に向かう

「雑貨コレクター」としても知られる森井さんは、さまざまなメディアにも執筆、出演もしている。いまほど個人旅行が一般的ではなかった頃から海外に長期滞在し、スーパーなどに並ぶ日用品や雑貨を日本の読者に紹介してきた。「きっかけはスペイン滞在中にスーパーで出合った桃のジュース。パッケージに青色が使われていて、当時日本では考えられなかった色使いに衝撃を受け、魅了されました」。以来、旅に出てはその国らしいデザイン、色使いなどに創作意欲を刺激されては、仕事に向かうという暮らしを続けてきた。一方で、いくら“日本らしくない変わった色使いができた!”と思っても、海外の人に言わせれば森井さんの作品は非常に日本的なのだとも。「日本人として生きてきた私の体に染みついているものがあり、作品ににじみ出るんでしょうね。うまく言葉にできませんが、それが私の作風ということだと思います」

コロナ禍で時間ができたことは、今後のことを考えるいい機会になったとも語る森井さん。「立体造形で使用した粘土をリサイクルし、アクセサリーをつくるなど、何か新しい商品開発にも挑戦したいですね。いずれにしても、私はこれからも“かわいい”を追求していくと思います」

©YUKA DESIGN
©YUKA DESIGN

森井 ユカ(もりい・ゆか)
専門学校桑沢デザイン研究所・リビングデザイン科卒業。東京造形大学大学院では「日本人にとってかわいいとは何か」を研究。ねんど遊びセット「ねんDo!」の企画・デザインなどを手掛けるほか、『スーパーマーケットマニア』シリーズ(講談社)など、雑貨コレクターとしての著書も多数。
URL http://www.yuka-design.com/

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