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「理想の詩」創り出す人々(2022年春号)

「リソグラフ」でつくる類のない映像

日本の映像作家100人を毎年紹介するサイト「映像作家100人」。2021年版のオープニング映像を岡さんが手がけた。

「リソグラフ」を使ったコマ撮りアニメーション

近未来的で洗練されたデザインと、温かみ、レトロ感を同時に感じさせる、ちょっと不思議な映像。モーショングラフィックスを主軸に、アナログとデジタルを文字通り融合させた作品を手がけるのが岡大夢さん。2019年から理想科学のデジタル印刷機「リソグラフ」を活用したコマ撮りアニメーションの制作を行っており、近年注目を集める若手映像作家だ。

ふだんは映像制作会社に勤める岡さんが「リソグラフ」に出合ったのは、映画祭に応募するためコマ撮りのアニメーション作品を自主制作しようと考えたのがきっかけだ。幼い頃になじみのあった「プリントゴッコ」を活用しようとリサーチする過程で「プリントゴッコ」の事業終了と、デジタル印刷機「リソグラフ」の存在を知った岡さん。「『リソグラフ』ならコストも印刷時間も抑えながら制作できる。しかもほかにやっている人が見当たらない。これだ、と思いました」と語る。印刷スタジオに通い試行錯誤しながら、デジタルで制作した映像を「リソグラフ」で紙に印刷し、それらを再び1枚ずつ撮影し映像化するという、独自のコマ撮りアニメーションの手法を確立させた。

ミリ単位で印刷のズレを調整するリソグラフ印刷スタジオHand Saw Pressの菅野信介さん(写真奥)。刷り師のような存在として岡さんの創作を支える。

素材が本来持つ質感に気づけた

「報道ステーション」オープニングにはフェデラルブルー、マゼンタ、イエローの3色を使用。6種類の異なる質感の用紙を使用し、映像に動きを出している。

ふだん従事している映像制作においては、PC画面上の操作で“〇〇風のタッチ”といった疑似的な質感を施すのが日常的だ。一方で「リソグラフ」を活用する場合、実際の印刷物をスキャンし拡大して使用するため、用紙の持つ繊維の風合いやケバ立ちなどの特性、インクの染み具合がわかりやすく可視化される。「デジタル上の処理ではなく、本物の素材を使うからこそ初めて気づけた。自分にとっては大きな発見でした」と語る。

岡さんの作品に注目したテレビ朝日「報道ステーション」の担当者から声がかかり、昨年10月から番組のオープニング動画に作品が採用されている。発信した情報がさまざまに解釈されうる報道番組と、もとは同じデータでも1枚1枚異なる味わいを生み出す「リソグラフ」印刷を重ね合わせ、ズレそのものをポジティブに受けとめ、多様性や不完全さの許容こそが重要という思いをこめた。「知り合いの先生から、学校にある『リソグラフ』でこんなことができるのか、という反響がありました」。

自身にとって“創作”は、興味や仕事、人間関係、コミュニケーションの幅を広げる根幹にあるパスポートであるとし、「先人のつくり手たちがさまざまな表現をやり尽くしてきた中で自分ができることは、映像と『リソグラフ』のような異なる要素の掛け合わせから作品をつくること。そのためにも、自分の中の引き出しを増やし続けていきたいですね」と語る。気鋭の映像作家がこれからどんな作品を生み出すのか。注目したい。

デザイン(デジタル)後、印刷(アナログ)し、コマ撮りアニメーションを制作(デジタル)するという、ほかにない手法を確立させた。

17秒の「報道ステーション」オープニング映像に使用されたのは120カット。印刷された1枚1枚をスキャンしアニメーション動画にしていく。

岡 大夢(おか・ひろむ)
1993年愛媛県生まれ。モーショングラフィックスを主軸にアナログとデジタルをミックスした作品を手がける映像作家。2019年より「リソグラフ」を使ったコマ撮りアニメーションの制作を開始。「映像作家100人 2021」オープニング映像のほか、2021年10月よりテレビ朝日「報道ステーション」オープニング動画を担当。

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