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「理想の詩」創り出す人々(2023年春号)

指先にほころぶ万彩の花々

18世紀オランダ生まれの画家ヤン・フランス・ファン・ダールの花の静物画をミニチュアで再現。高さは7センチにも満たない。

趣味で始めたミニチュアフラワー制作が人生を大きく変えた

ミニチュアフードやドールハウス、模型、ジオラマまで、実物に忠実に、しかしスケールは何分の1にも縮小させたミニチュアアートは、なぜか見ると惹きつけられ、その小さな世界の奥深くへと引き込まれていくような不思議な魅力がある。「自分の手で想像の世界を形にできる。それが楽しくてやめられないんです」と話すのは、宮崎由香里さん。本物と見紛うほどのリアルなミニチュアフラワーを数多く手がける話題のミニチュアフラワー作家だ。作品だけでなく制作工程などもSNSで発信しており、そのあまりの精巧さから“神の手”を持つと評される。

宮崎さんが初めてミニチュアフラワーをつくったのは2002年。当時、美容師として仕事をしていた宮崎さんは、付録を通じてドールハウスづくりが学べる雑誌のシリーズを購読。「テレビCMを見て興味がわき、やってみようと思い立ちました。でもドールハウスづくりを進めるうち、この家にお花を置いたら素敵だろうなと思うようになって。だったら自分でつくってしまおうと思ったんです」と笑顔で語る宮崎さん。近所のホームセンターで材料を揃え、見よう見まねでミニチュアフラワー制作をスタートさせた。やがて少しずつつくり貯めた作品をホームページで紹介したり、ミニチュアショーにも出展するように。希望者に応えてミニチュアフラワー教室も開校。コロナ禍を境に本業から離れ、ミニチュアフラワーづくりに専念。以来、オンライン教室やSNSでの発表、作品集などを通し、ミニチュアフラワー制作の魅力を発信し続けている。 

ドールハウスはもともと家具や調度品などをそれぞれ専門とする作家がつくる分業制だったことから、12分の1の統一スケールが採用されている。

「ミニチュア制作において一般的な12分の1という縮尺は、花びらなどを指先で細かく細工するのに、私にとってはもっともつくりやすいサイズ」と宮崎さん。

二度と同じものはつくれないのも手仕事の魅力

教室では同じように指導しても、生徒さんの作品にはそれぞれ個性が出る。それも、手作業が多くを占めるミニチュアフラワーの特徴だ。「私もまったく同じものは二度とつくれません。それぞれが一点もの。手を使ってつくる最大の魅力です」と宮崎さんは話す。

また、自分の思いが形になることこそ、ものづくりの喜びだ、とも。「ミニチュアフラワーのある風景をつくるときは、そこでどんな人が暮らし、どんな時間を過ごしているのか、いつも想像しながら制作しています。頭のなかにいるのはたいてい、自分自身(笑)。私が理想とする世界や場所、瞬間に、ミニチュアの世界が連れて行ってくれるんです。私の作品を見た人にも、少しでも幸せを感じたり、想像の世界を楽しんでもらえたら嬉しいですね」と笑顔で締めくくってくれた。

人生の記念日にもらったブーケや、結婚式のブーケをミニチュアにしてほしいというオーダーも。ミニチュアフラワーにすることで大切な瞬間をそのまま残すことができる。

花の構造を理解し、色を分解するところから作業はスタート。半透明の樹脂粘土に、水彩絵の具を練りこんでいき、何種類もの色の粘土をつくる。細かいところは成形後に筆で着色。

写真手前左から極細の筆、粘土用細工棒、粘土用ハサミ、ピンセット、接着剤、日本製の樹脂粘土。写真奥は水彩絵の具。よく使用する色のみ少量ずつ保管している。

宮崎 由香里(みやざき・ゆかり)
2002年よりミニチュアフラワー制作を開始。独学で技術を身につけ、自身が大好きな花や自然をモチーフにした作品を数多く発表し、多くのファンを持つ。ミニチュアフラワー教室の主宰、展示会への出展などを通し、ミニチュアフラワーの魅力を精力的に発信している。作品集に『ミニチュアフラワーレッスン』(主婦の友社)がある。

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