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「理想の詩」創り出す人々(2025年春号)

想像で広がるたったひとつの無限宇宙

つくり方に正解がないからこそ、さまざまな表現の可能性も秘めている。素材としての耐熱ガラスは、透明度が高く、硬度も高いので割れにくい。経年劣化がほとんどなく、持つと意外と軽いのも魅力だ。

耐熱ガラスの表現の可能性に魅了された

手のひらサイズのガラスの球体に閉じ込められた、無限の宇宙空間。覗きこんでみると、まるで広大な宇宙の中に吸い込まれていくような錯覚さえ覚える。耐熱ガラスや鉱物を使って、惑星や銀河、星雲、星の軌道などを表現し、神秘的で幻想的な作品が話題となっているのが、「宇宙ガラス」だ。
「現実の宇宙そのものではなく、私がイメージする宇宙を表現しており、作品を見た人のイメージと合わさってはじめて完成すると思っています」と話すのは、宇宙ガラスを考案した戸水賢志さん。その独創性と美しさがSNSなどで注目を集め、世界中にファンを抱えるアーティストだ。
幼少期からものづくりが好きだったという戸水さん。システムエンジニアとして一般企業に勤めながら趣味でシルバージュエリーの制作を続けていたが、あるときシルバージュエリーに、新たな素材を使用したパーツを組み合わせようと思い立ち、出会ったのが耐熱ガラスだった。「ひとたびガラスの造形方法を学んでみると、表現手段としての耐熱ガラスの魅力に夢中になってしまいました」。会社員生活のかたわら、夜な夜な制作を続けては作品を発表する日々を経て、2016年に独立を果たした。

まだ柔らかいガラスの球体を型に押しつけ、徐々に形を整えていく。

素材となるさまざまな種類の耐熱ガラス菅。1800℃の熱で溶かし、造形していく。

見る人の想像をかきたてる“宇宙”というもの

当初は花やクラゲなどのモチーフをデザインにしていたが、やがて“見たことがなく、想像をかきたてられるもの”として思い立ったのが宇宙だったと話す戸水さん。耐熱ガラスで造形した球体の中に、オパールや純銀などの鉱物を埋め込み、きらめく惑星やその軌道、また宇宙空間の奥行きなどの表現を編み出した。頭の中に思い描く宇宙の姿を形にするために、いまでも試行錯誤を繰り返す日々だといい、実際、土星の輪のようなリングをつくる製法を生み出すまで5年程かかったという。
作品の一つ一つが、2つと同じものはない1点ものであることも、宇宙ガラスの大きな魅力だ。「宇宙のイメージは人それぞれ違いますよね。宇宙ガラスも、見た人が頭の中でイメージを膨らませてはじめて完成する。それぞれの宇宙を想像して、楽しんでいただけたら嬉しいです」と戸水さん。自身が生み出すものだからこそ、「限界を自ら設けないようにしたい」とも語り、今後はこれまでよりも大きめの球体にも挑戦していくそうだ。唯一無二のアーティストが生み出す神秘の世界に、その手で触れてみてはいかがだろうか。

「宇宙のイメージを限定させないよう、あえて本物の宇宙の写真などは見ないようにしている」と戸水さん。

ライトの明かりや太陽光など、光の当たり具合や角度によってさまざまな色合いや表情を見せてくれる。

戸水 賢志(とみず・さとし)
1980年生まれ。2008年に耐熱ガラスという素材と出会い、「宇宙ガラス」を考案。2015年J-WAVEアトリエ・ノヴァDesign Award大賞受賞。2016年、株式会社PlusAlpha設立。2018年、著名ギタリストのアルバムジャケットに宇宙ガラスが起用されるなど、各方面で人気を集めている。

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