日本最大規模のクルーズ船「飛鳥U」は2006年に就航。以来、多くのクルーズファンや、記念日などに特別な体験を求める乗客に愛されている。ときに数カ月間と長期にわたる船旅の中で印刷物が果たしている役割について探る。
船内に足を踏み入れた瞬間、豪華なエントランスホールと乗組員の笑顔に出迎えられ、すでに特別な体験が待っていることを知らされる。広大な船内には、レストラン、映画館、ブティック、ジムなどが揃いまるでひとつの街のようだ。
郵船クルーズ株式会社の今村政美さん(フロント担当)は「長い旅程では、いかにふだんと同じように過ごせるかが重要になります。旅自体は非日常的ですが、飛鳥IIではそれが日常になる楽しみがあるんです」と話す。
船上ではパーティーやカルチャー教室などのイベント、寄港地では現地の観光や季節の行事と、活動内容は盛りだくさん。その膨大な情報を乗客にわかりやすく提供しているのが日々発行される印刷物だ。
「お客様の時間を邪魔しないよう船内放送を控えていることもあり、紙媒体が一番適切なメディアなんです」と今村さん。特に毎日客室に届けられる船内新聞「ASUKA DAILY」は、日の出・日没時間からイベントのタイムテーブルまでを網羅。船にまつわるトリビアをコラムで紹介したりと、読み応えのある紙面となっている。
メニュー印刷にもリソグラフが活躍。
ほかにも、食事のメニュー、寄港地の観光情報や散策マップ、下船時の注意点などを印刷。多いときで800名以上にのぼる乗客に向け、高速で大量印刷できるリソグラフと紙折機を駆使し最新情報を提供している。
印刷物制作を担当する加賀美春乃さんは話す。
「海上では予定がどうしても天候に左右されるため、イベント内容や寄港地が急に変更になるケースもあります。その都度お客様に対しては臨機応変に情報伝達することが求められますが、リソグラフの高速印刷で、最新情報を即時にお伝えすることができています」
日々の「ASUKA DAILY」を旅の記録として大切にファイリングし、持ち帰るお客様も多いという。不可欠な情報インフラとして、また、旅を彩り、いつまでも残る思い出として。印刷物が極上のおもてなしをサポートする姿があった。
外国人スタッフにもわかるよう、スケジュールには簡単な英語とイラストが。
あらかじめヘッダーが刷られた台紙に、落ち着いた茶色と紺のインクを使用。乗客一人ひとりに提供されるほか、船内各所にも掲示されている。
揺れもさることながら、航路により海水の温度差から船内の湿度や温度も異なる。熱による定着を必要とするトナーを使用しないため、電力消費を抑えながら、さまざまな印刷環境に耐えられるのはリソグラフならでは。
長期間にわたるクルーズに備え、インクの在庫を保管。
「理想紙折機」で次々と折られていく「ASUKA DAILY」。「大量の印刷物を美しくスピーディーにお客様のもとへ届けられるため、重宝しています」と加賀美さん。
2006年就航。全長241m、全幅29.6mで客室数436室。乗客定員872名、乗組員約470名。郵船クルーズ株式会社が所有する日本最大の客船。充実した設備とサービスで洋上のオアシスと呼ばれ、1泊から3カ月におよぶ世界一周クルーズまで旅のプランは多岐にわたる。「きめ細かな和の心のおもてなし」が好評で先代「飛鳥」からの20年来のファンも多い。
理想科学工業株式会社
神奈川営業部 理想横浜支店 CE課 二井内 渉(右)、同営業一課 水嶋 啓之(左)
「出港した後で何かあれば、メールや電話で修理方法をお伝えすることも。長旅に備えて、今後もこまめに部品交換などを心がけていきたいですね」(二井内)
郵船クルーズ株式会社
今村政美さん